3時間超の映画に休憩は必要?アンケート結果レポート

S・S・ラージャマウリ監督のインド映画RRRが、作品中に「INTERRRVALL(休憩、RRRが3つ並んでいるのはタイトルに合わせた洒落)」と映し出されるにも関わらず、3時間、途中休憩なしで上映されている。これは『RRR』に限ったことではなく、最近では配給会社は異なるインド映画スーパー30 アーナンド先生の教室も同じ状態で上映されていた。

インド映画は2時間半を超える長尺作品が多く、だいたい真ん中くらいで15分ほどの休憩時間が設けられる。しかし日本公開の際に休憩が入ることは少なく、「休憩」という扉絵が外されているケースも多い。途中休憩という慣例のない国に向けた上映素材、ということか。いずれにせよインド映画は休憩前後で物語のトーンや展開が大きく変わるので、「休憩」と出ようが出まいが「あ、ここが折り返し地点だな」とわかるようにできている。

ただし途中休憩は別にインド映画の専売特許ではない。『ベン・ハー』でも『クレオパトラ』でも『風と共に去りぬ』でもなんでもいいのだが、昔の長尺のハリウッド映画には休憩が入るのが当たり前だったし、黒澤明監督の『七人の侍』のように日本映画でも休憩が入る作品はあった。最近では濱口竜介監督の『ハッピーアワー』は上映時間が6時間を超えており、途中に2回の休憩が入る体裁になっている。

筆者個人は加齢に合わせて年々頻尿化が進み、2時間以下の映画でも上映前と上映後に必ずトイレに行くようになった。長い映画でも面白ければ気にならない、という人もいるだろうが、そもそも人体は3、4時間座りっぱなしでいられるようにできてないんじゃないか。そうでなくとも、前述の作品群は休憩が入る前提で作られてるのだから、途中休憩ありで鑑賞させて欲しいというのが本音である。

と、そんなことを時折思い出したようにツイートしたり話題にしたりしていたが、ほかの人たちがどう思っているのかが気になってきた。というよりも、自分ひとりが「休憩入り上映」を乞い願ったところで影響力などたかが知れている。しかし大勢の映画ファンが同じような願望を持っているとすれば、配給会社や映画館が今後「休憩入り上映」を検討してくれる材料になるのではないか。

そんなわけで、Twitter上でアンケートを取ってみた

アンケートのツイートはそのまま残してあるのでTwitter上でも結果はご覧いただけるが、わかりやすいようにグラフにしてみたので、結果報告としてまとめておきます。

ちなみに5つある設問の中で一番回答数が多かったのが1,594人。一番少なくて534人。統計学上の有意水準を満たす最低基準は400サンプルらしいので、Twitterユーザー限定とはいえ「映画に興味があるクラスタ」向けの調査としては、ある程度の信頼性はあるんじゃないかと思っています。

問1を見る限り、長尺の映画で「休憩がないなら行きません!」という人は20%ほど。およそ8割の人は、観たい映画なら長さは気にせずに観に行く、と答えたことになる。

とはいえ「行くには行くけれど、休憩があったほうがもっといい」というお仲間もいるのではと思ったので、質問の仕方を変えてみた。

問2だと「休憩なんていらない」という人は13.4%とかなり少ない。むしろ8割以上の人が「もともと休憩が入るようにできている作品なのであれば、日本での上映も休憩はあったほうがいい」と思っていることになる。

途中休憩が欲しい理由は「作品の意図を尊重して欲しい」や「体力、集中力の問題」「体調のコントロール」など人によっていろいろだと思うが、一番多くの人が困っているのがトイレを我慢しないといけない問題ではないか。そこで問3では、普段映画館に行く人のトイレ対策について訊いてみた。

水分を摂らないようにしたり、とにかく我慢したりして、なんとか上映時間をしのごうとする人が全体の8割弱。16.3%の人は、もうトイレのために中座するのは仕方ないと覚悟していることになる。

「効果的な対策術」という選択肢を設けたのは、「事前に餅か、餅っぽいものを食べておくと尿意をもよおさない」という都市伝説的な対策法を聞いたから。ネット検索してみるとわりと古くから言われている有名な手らしい。どこまで信憑性があるのかは皆目わかりませんが。

問4は、問2とほぼ同じように見えるかも知れないが、すべての上映ではなく、一日一回限定とか、どこそこの劇場では途中休憩があるとか、観客として選択肢があったほうがいいか?という質問。ここでは約7割が「途中休憩という選択肢は欲しい」を選んでいる。これって逆に言えば、選択肢がないから長尺の映画を諦めている人たちを映画館に呼び戻す可能性があると思うんですが、配給さん、劇場さん、ご検討いただけないでしょうか?

そして最後の質問、問5は、年を取るにつれて長い映画を観るハードルが上がっていませんか?という問いかけ。というのも「自分はぜんぜん大丈夫なんで休憩なしでも気にならない」という意見を複数見かけたからで、齢50の中高年側にいる者として「それはまだ若いから言えるのではないですか?」と疑問に思ったから。

回答者の年齢層は把握できていないが、「長尺の映画はもう観ない」という人はわずかだが、全体の6割ほどが「長尺の休憩なしはつらい」と感じているので、やはり長尺映画が観客にある程度の負担を強いているのは間違いないんじゃないだろうか。

ただし現実問題として、途中休憩を入れるには、配給側がそのために別の上映素材を用意したり、映画館側が休憩時間に対応するためのリソースを割かないといけないこと、上映回数が減ることなどがネックになると予想される。観客側から声を上がったところで簡単に実現するものではないでしょう。しかし少なくとも、映画を楽しむための選択肢が増えて、そこにニーズが生まれれば、また「途中休憩」が当たり前になる時代がやってくるかも知れない!と夢想している次第です。

あと自分は完全に「途中休憩が欲しい」というスタンスで書いていますが、今回のアンケートを見る限り、「途中休憩」を望む声は決して大きくはないし、さりとて皆無でもない、といったところでしょうか。

しかし、残りわずかになった2022年終盤の目玉になりそうなブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバーは2時間41分、アバター:ウェイ・オブ・ウォーターは3時間を超えるらしい。その2作品を今から休憩付きにしてもらえるとは思っていないが、観る側にとっては結構切実な問題なんで、今後も話題にしていきたいし、今回のアンケートがわずかでも役に立てればと思っています。そしてアンケートにご参加いただいた方々、本当にありがとうございました。エンラハ!